Benesse Method 01 高齢者ホームの環境創造を支援する「パターン・ランゲージ」 その方らしさに寄りそった環境づくりの手掛かり
No.043
目的のいらない場所
これにより
一脚の椅子を置いた時、そこが特別な意味付けが無い場所であっても、人の個性で満たされるコスモスに生まれ変わる。どうぞお座り下さいという意味が生まれ、時間が過ごせる空間に変容する。
その背景には
もとより、私たちは空間に一脚の椅子を置くことに慣れておらず、ただそこに座って過ごす場をつくることがサービスにつながると思っていない。
- 一脚だけで置かれることを想定したデザインがなされていない、あるいはそれに耐えうるデザインではない。
- ダイニングチェアやシングルソファーなど、椅子には最初から何かを目的とした用途がある。
- 椅子やソファーは大抵の場合、テーブルや他の椅子と組になって使われる。
こんな風に
建物の中、そしてまちなかでも、一脚の椅子を置くことで使う人だけにとっての小さな世界が生まれ、様々な使われ方がはじまる。
椅子にじっと座って書物を読む、一人で考えにふける、外の景色を眺める、さらにもう一つの椅子を置いて、気が合う人とのひと時の会話を楽しむ、気になることや困りごとの相談を行う。テーブルを加えるとティータイムのお茶を楽しむ場所になる。さらに、一脚が二~三と増える時には井戸端会議の場が出現する。
もちろん椅子が用意されていることで一時的な休息を得ることができ、次の行動に移る前の準備の場となる。
一脚の椅子が置けるくらいの小さな場所をつくる。あるいは、あらかじめ決められたところ以外の場所に椅子やソファーを置く。
その世界は椅子を置くことで生まれるため、予想外の場所にゲリラ的に出現することが多い。
計画段階で、共用部の隅や廊下との結節点などに数脚の椅子やソファーが納まるような小さな空間を用意する。
具体的な入居者を想定して、いつ何のために座るのかと思い浮かべ、場所や椅子の種類を熟考する。
実践例
アリア六本木 エントランスラウンジ
ボンセジュール四つ木 ダイニングルーム兼機能訓練室
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