シンポジウム「長寿時代の食コミュニティとその評価」に登壇、老人ホームにおける「食べる」の意味について発表
2023年10月28日~29日に大阪大学会館にて第18回日本応用老年学会大会が開催され、研究所の福田が発表しました。高齢者関連の研究を対象とした学会はいろいろありますが、この学会は老年学(ジェロントロジー)の知見をさまざまな形で実装することを目指しており、第18回大会のテーマ「基礎から応用への架け橋」は、この学会の活動の重要性を改めて示したものであるといえます。
シンポジウム「長寿時代の食コミュニティとその評価」においては、誰かと一緒に何かを食べ、分かち合うことが人間の根源的営みである一方、一人暮らしの高齢者等で「孤食」が課題となっており、その課題解決に向けてのさまざまな取り組みについて報告されました。
当研究所からは「老人ホームにおける「食べる」の意味」と題して発表を行いました(登壇者:福田亮子)。老人ホームの生活において「食べる」ことにはさまざまな意味があります。生きるためのエネルギーを得ることはもちろん、味や香り、食感、見た目を楽しむことはよい「刺激」となります。ご入居者様が美味しく楽しく食事できるよう、当社の老人ホームにおいては、食事にかかわる機能の維持・向上を目指したケアや、食形態に配慮し、旬の食材や季節のイベントに合わせたメニューも取り入れるなど生活に彩りを添える食事の提供、食事を安全かつ快適に楽しめる環境づくりを行っています。
日常生活においては、「食べる」ことから広がる活動もたくさんあり、その多くが社会性の維持に繋がります。3度の食事やティータイム、飲み会などで他のご入居者様と一緒に何かを食べたり飲んだりお喋りをしたりすることは、さらなる関係性の広がりや深化を生み出し、ご入居者様の生活を豊かにします。テーブル拭きや下膳、食器洗いなどをしてくださるご入居者様は、ホームでの役割を果たすことにより生きがいを感じられています。ご入居者様自らがお料理をするアクティビティでは、メニュー選びや味付けの仕方で議論が白熱することもしばしばです。食材となる野菜の栽培においては、種まきから収穫までの長期にわたる世話の中で、もともと畑仕事をされていた方や家庭菜園を趣味とされていた方から他のご入居者様や職員が学ぶことも多くあります。
上記のように、老人ホームにおいては多くのご入居者様が一緒に暮らしていることから、孤食は比較的起こりにくいですが、他のシンポジウム登壇者からは、地域で生活する高齢者においては、特に都市部で独居や孤食が多く、外出しない方では低栄養傾向が高いなどの現象も見られていることが指摘されました。人が集い一緒に食事することができる場の提供やオンラインでの共食、SNSを使った食体験の共有、さらにはそのような場を盛り上げるために人と人をつなぐツールの開発など、さまざまな形での食コミュニティの構築とその効果検証についての報告を通じ、今後の食コミュニティのあり方について考える機会となりました。
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