提供:ベネッセホールディングス

2022年3月にオープン予定の介護付有料老人ホーム「グランダ四谷」は、各種センサー機器を導入するベネッセ初の「センシングホーム」。介護施設の未来を照らすそのホームが見据えるものは何か。執行役員のお二人に話をうかがった。

「人」と「テクノロジー」の融合で入居者のQOL向上に挑む

2022年3月に新たにオープンするベネッセスタイルケアのセンシングホーム「グランダ四谷」
2022年3月に新たにオープンするベネッセスタイルケアのセンシングホーム「グランダ四谷」

「グランダ四谷」は、ベネッセスタイルケア初のセンシングホームとのことですが、どのようなホームなのでしょうか。

祝田健氏(以下、祝田):ご入居者の日々の状態を可視化できるさまざまなセンサー機器を導入し、「人」と「テクノロジー」の融合を通して、ご入居者のQOL向上を目指す介護付有料老人ホーム(指定申請予定)です。

写真右から、執行役員 サービス推進本部長の祝田健氏、執行役員 専門性開発部長の松本知恵氏
写真右から、執行役員 サービス推進本部長の祝田健氏、執行役員 専門性開発部長の松本知恵氏

松本知恵氏(以下、松本):背景には、2018年7月に全社導入が完了した、自社独自開発の介護・看護記録システム、「サービスナビゲーションシステム(略称:サーナビ)」があります。

祝田:介護職員や看護職員は一日に何度も記録を読み書きするため、始めはその効率化のためにデジタル化を推進。しかし結局、私たちが納得できるシステムを完成させるまでに3年間を費やしました。その甲斐あって、単なる効率化ではなく、職員の気づきを促し、サービスの質を向上させることのできる「サーナビ」という独自のシステムが出来上がったのです。ご入居者お一人おひとりのケアプランをタイムテーブルで表示し、単純な記録はアイコンにして操作性と視認性を高めつつ、日々のご様子や担当職員の気づきをしっかり書き込むことができます。

松本:「サーナビ」のおかげで記録業務や多職種連携がよりスムーズになり、時間に余裕が生まれました。その分、ご入居者と向き合う時間も増え、ご入居者のQOL向上にもさらに力を入れられるようになりました。

祝田:さらに同時並行で強化していた人財育成の成果が表れ、高いスキルを持つ介護人財「マジ神(*)」の育成が進んできたことから、介護業務支援プラットフォームを持つパナソニック社とともに、当社の「サーナビ」やさまざまなセンサーで得られるデータと「マジ神」の視点を融合したソリューションを開発していこうという構想が生まれたのです。

*マジ神:ベネッセスタイルケアの社内資格制度で介護の高い専門性と実践力を認定された介護の匠

センサーで“日常”を可視化。QOL向上+介護人財の育成も

松本:「グランダ四谷」では、ご入居者お一人おひとりの睡眠や排泄、活動状況などをセンサーで毎日可視化していきます。私たちにとって大切なのは、その可視化されたデータを、ご入居者個々に違う「ありたい姿・状態」に照らし合わせながら、QOL向上に向けて読み解いていくことです。

祝田:そのときに、「サーナビ」の記録が役に立ってくるんですよね。

松本:そうなんです。24時間365日、介護スタッフはご入居者のいちばん近くで、長い時間を一緒に過ごさせていただいています。だからこそ、普段の生活や何気ない会話、表情、しぐさからも、その方らしさを感じることができ、小さな変化にも気づくことができます。これは、「人」だからこそできることで、介護スタッフだからこその強みです。「サーナビ」には、そんな介護スタッフたちが日々感じていることや考えていることが記録として蓄積されています。ただ、介護スタッフ全員がセンサーのデータや「サーナビ」の記録を、きちんと読み解けるとは限りません。気づきはたくさんあっても、さまざまなデータを読み解き、ご入居者それぞれのQOLを向上するには、研修と実践を通しての一定の学びが必要なんです。

祝田:そこで登場するのが「マジ神」。「マジ神」は、豊富な知識と実践知に裏付けされた、記録やデータを読み解く力を持っています。「グランダ四谷」には、その「マジ神」の知見・観点を教師データとしたAI=「マジ神AI」を開発して導入していきます。「マジ神AI」では、センサーデータや「サーナビ」記録をダッシュボードで見せるとともに、そこから読み解かれた、「着目しなければならない観点」を提案してくれるソリューションの構築を予定しています。

松本:「マジ神」ほどの知識や実践知がない介護スタッフでも、「マジ神AI」のアシストがあることで、ご入居者の「ありたい姿・状態」や「現状」を読み解き、仮説を立てやすくなります。スタッフが立てた仮説を実践してみて、ご入居者のQOLが向上する実感を持つことで、さらに気づきの感度が上がり、読み解くための思考プロセスと観点が育成されていくという好循環が生まれてきます。

祝田:ホームでの実践に加えて、介護スタッフ向けの研修にも活かしていくことで、人財育成の質が深まると同時に習熟のスピードもアップしていきます。結果として、ご入居者のQOL向上の事例が、数多く生み出されることにもつながっていくと思います。

介護の仕事が正しく評価され、ご高齢者が年をとればとるほど幸せになる社会へ

松本:マジ神がデータを読み解くプロセスを発展させ、テクノロジーによって介護スタッフの思考プロセスや着眼点が深まり、専門性が育成されて、国内外で介護を必要とされる方々のQOLも向上していく。QOL向上の事例がたくさん生まれてくれば、「年をとればとるほど幸せになる社会」「介護スタッフが自信を持ってご入居者のQOL向上に努め、喜びを感じ、介護の仕事の専門性と奥深さを実感できる社会」も夢物語ではなくなります。

祝田:そして、社会における介護の仕事の価値が正しく認められ、高い志を持って介護職を目指す人がたくさん生まれる社会になってほしい。日本で、さらに世界で、「年をとること」そして「介護の価値やイメージ」をポジティブなものに変えていきたいですね。

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